40年以上におよぶ写真家生活の中で、世界中のネコを撮影してきた動物写真家の岩合光昭さん。各国のネコ事情について、作家・林真理子さんとの対談で明かしました。
【写真】岩合さん監督の映画で主役を射止めた猫の「ベーコン」。週刊朝日の表紙に堂々登場!
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林:世界のネコちゃんって国によって顔が違うんでしょう?
岩合:ネコはネコだと思います。ただ、暮らし方が違うので、のんびりした人が多いところはネコものんびりしてますし、人がせっかちに動くところは、ネコもなんとなく戦々恐々としてるような感じがします。寄り添う形で人に殉じるのがネコなので、人がいないとおそらくネコは暮らしていけないと思います。
林:私、前に駐車場でネコにエサをあげてたら、「やめてください」って貼り紙されたんですが、ほかの国はさりげなくエサをあげてるんですか。
岩合:やり方は国さまざまなのですが、どこの国でもネコにやさしい人と出会います。大体は自分が食べたものをネコに与えてる。イタリアではパスタをやったり、香川ではうどんをやったり(笑)。
林:香川のネコはうどんを食べるんですか。
岩合:食べますよ。すすってます、上手に(笑)。そういうのを見ると、「ああ、人に寄り添って生きてるんだな」という気がして、ホッとさせられるんですよね。
林:なるほどね。
岩合:顔が傷だらけの雄ネコを撮影対象にしたことがあるんです。「おはよう」と声かけをすると、その傷だらけのネコが振り返って「えっ、俺のこと?」って顔をするんで、「そう、キミのこと」って言うんです。おそらくこの雄ネコは今まで人に声をかけられたことがないんじゃないかと思ったりして、そのあととても協力的になってくれたりするんですよ。やっぱりネコも人を見るんだなと思いますね。
林:へーえ、そこまで意思疎通ができるんですね。
岩合:意思疎通が図れたかどうか、こちらの思いだけなんでわからないですけどね。動物って目と目が合うと敵対意識を持つと言われてますけど、そんなときは目をパチパチとしばたたかせると、向こうはすごく安心するんです。