猫は往々にして食の好みにうるさく、気まぐれだ。昨日までおいしそうに食べていた猫缶に「ザッザッ」と砂かけをされたりした経験を持つ飼い主は少なくないはず。そんなとき「手作りごはん」を試してみてはどうだろうか。
「愛猫のために特別なことをしてあげたい。でも全部を手作りにするのは栄養学的にも難しい。そこで『おやつ』感覚で、いつものごはんにプラスしよう、という提案です」
獣医師のアドバイスを得て『猫が喜ぶ手作りごはん』を制作した、保護猫カフェ「ネコリパブリック」代表の河瀬麻花さん(44)は話す。「スープ」「ふりかけ」「ごちそう」の三つのテーマがある。ごちそうはわかるが、なぜ、スープとふりかけなのだろうか。
「猫は水分を必要としますが、なかなか水を飲んでくれないときがある。猫の好む鶏のだしの利いた鶏ガラスープだと、喜んで飲んでくれることがあります」
「ふりかけ」はいつものキャットフードにプラスするので初めての猫にもトライしやすい。猫用には調味料を使わないので、残りは人間用にアレンジもできる。カフェの猫たちにも味見をしてもらったという。
「全般的に肉系のほうが食いつきがよく、なかでも鶏肉を使ったものが一番人気でしたね」(河瀬さん)
レシピ本に協力した東京猫医療センター・服部幸院長は「猫に手作りごはんを与えたい、という要望は増えています」と話す。
「ただし主食として与えるには生半可な知識ではダメです。猫に必要な栄養素をすべて理解してからでないとできません。注意点もよく確認し、あくまでもおやつとしてあげてください」
猫は基本肉食で、栄養素のなかではタンパク質をより必要とする。タンパク質のなかでもタウリンが欠乏すると心臓病を引き起こし重篤な状態になる。タウリンは猫の総合栄養食には必ず入っているが、ドッグフードには入っていないので猫には与えないほうがよい。青魚に含まれる不飽和脂肪酸は、過剰に摂取すると「黄色脂肪症(イエローファット)」を引き起こす。
「マグロはサバ科で、青魚に入りますが、猫用缶詰のマグロにはビタミンEが添加され安全な食材になっています。納豆は好みが分かれると思いますが、タンパク質なので与えても問題ありません」(服部院長)
猫に与えると中毒を引き起こすものもあるので注意したい。主食には総合栄養食、手作りごはんは猫の反応をみながら「やりすぎない」ことが大切だ。
ちなみにわが家の2匹のうち1匹が「サーモン納豆ふりかけ」に興味を示し、鼻チョン、までいった。次はいける……かも?(ライター、愛玩動物飼養管理士・中村千晶)