林:日本は出すぎると何か言われるしね。そのサジ加減が難しい。
雨宮:でも、失うものもあまりないですし、打たれるのを恐れて自分でなくなるのは子どもたちを置いてきてまで取り組む仕事ではなくなってしまうかなと思うんです。
林:「母親のくせに、子どもをパリに置いてきて」みたいな考えは、実に日本的ですよね。
雨宮:女性にとって母親である部分は消えようがないですよね。ただ、フランスでは「母親だからこうすべき」という考え方ではなくて、職業人として、ひとりの女性としてどうするかがまず問われます。
林:そこがふつうの日本人の感覚と違うのかもしれない。
雨宮:ただ、日本的な考えもわからなくはなくて、そう思われて当然だろうなと思いますし、実際に子どもが学業のことなどで悩んでいるときに、そばにいてやれない不甲斐なさはいつも感じています。
(構成/本誌・松岡かすみ)
※週刊朝日 2018年12月21日号より抜粋