ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。“今年を象徴する単語”について解説する。
【写真】話題になったトランプ大統領のホワイトハウスでの記者会見の様子
* * *
インターネット英英辞書サイト「Dictionary.com」は11月26日、「2018年の単語」を発表した。今年を象徴する単語として選ばれたのは、「誤情報(misinformation)」だった。同サイトはこれを「誤解を誘うことを意図したかどうかにかかわらず、拡散した誤った情報」と定義している。
いまやインターネットには、フェイクニュースやデマが蔓延(まんえん)している。もちろん、その状況はネットだけではない。最近の米ワシントン・ポストの報道によれば、トランプ大統領は就任以降、間違い・ミスリードな発言を6420回、1日あたり約10回も繰り返しているという。
さらに、インターネットのフェイクニュースやデマは現実の暴力にまで発展している。トランプ大統領に批判的な政治家や著名人を標的とした小包爆弾犯も、ピッツバーグのユダヤ教礼拝所を狙った銃撃犯も、ネットに蔓延するデマや陰謀論の信奉者であった。
このような状況下で注目を集めてきたのは、「虚偽情報(disinformation)」という言葉だ。虚偽情報と誤情報は似た概念ではあるのだが、なぜ後者が選ばれたのだろうか。
同サイトでは、虚偽情報を「故意に誤解を誘うゆがめられた情報、ねじ曲げられた呼びかけや事実、プロパガンダ」と定義。同サイトの辞書編集者であるジェーン・ソロモン氏によれば、この二つの単語は「意図」の点で異なるのだという。同じ間違った情報であっても、事実と思い込んで拡散されれば誤情報であり、事実をゆがめる意図を持って拡散されれば虚偽情報となる。だまそうとする意図を持った虚偽情報のほうがより悪質に思えるのだが、ソロモン氏によれば、あえて「誤情報」という言葉を選んだという。