「クレーヴィングの存在に気付いたら(認識)、それにあらがうのではなく受け止め、招き入れます(受け入れ)。次に、そのクレーヴィングがどのように高まってきているか、そのときに体はどう変化しているかを観察して(調査)、そこで得た情報を、『胃がカーッとしている』『落ち着かない』『気持ちに圧倒される』といった短い単語やフレーズに置き換えます(記述)。このRAINはクレーヴィングが来るたびに続けます」(同)

 久賀谷さんは、健康に問題のない人であれば、“プチ絶食”によるクレーヴィング体験を勧めている。ストレスからではなく、究極の空腹からくるクレーヴィングを経験することで、RAINがやりやすいためだ。

「おもしろいことに、RAINを続けていくことで、だんだん食べたいという欲求が弱まってきます。禁煙や禁酒と同じです。そうした手応えを感じられるようになったら、次のフェーズにトライしてみましょう」

 最後のフェーズでは、冒頭で説明した「心の空洞を違うもので埋める」ためのテクニックを習得する。

「ダイエットの希望者に話を聞くと、たいていの人が『体重を落としたい』『スリムになりたい』と言います。やせたいということばかり考えていますが、それは実は目的ではなくて結果であり、その変化は氷山の一角といえるかもしれません。食べ方という根幹が変われば、体重はおのずと変わってくるので、案外近道なんです」(同)

 最初に試みたいのが、「自分を褒めること、自分に優しくなること」だ。食べ方を変えることからは外れているように思えるが、むしろマインドフル・ダイエットの成功の秘訣(ひけつ)はここにあるという。

「ダイエットをする人の共通点は、自分への評価が厳しいということ。まずはその部分を変える必要があります。『こうでなきゃいけない』という完璧主義をやめて、自分を許しましょう。『ま、いいか』というぐらいのゆとりが欲しいですね。また、鏡に映る自分を褒めてあげてください」(同)

 それができるようになったら、周りの人に「ありがとう」の気持ちを積極的に伝えよう。周囲に感謝することで、前述した後帯状皮質の活動が低下し、幸福度が25%上がるという報告もある。

「自分を褒めて周りに感謝する」のは、太らない脳を作り、維持するための、最も大事なメソッドといえる。

 友人らからの食事やお茶の誘いや、仕事の付き合いで会食などに参加するときはどうするのか。せっかく習得した新しい食べ方ができないだけでなく、「ここのケーキおいしいよ」とか、飲んだ後に「ラーメンに付き合ってほしい」といった誘惑もある。以前の食べ方のクセが復活してしまうのではないかと、心配になってしまう。

「“許す”という部分にもつながりますが、たまにはそれでもいいと思うんです。本来、食事は楽しくいただくもの。食べ方に対する新しいテクニックを身につけておけば、食べてしまった後悔から脳が暴走して過食に走るようなことはありません」(同)

 暴飲暴食や運動不足からくる「冬太り」が気になり始めるころ。スッキリした心と体で新年を迎えるため、マインドフル・ダイエットに挑戦してみては。(本誌・山内リカ)

※週刊朝日2018年11月30日号

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?