(イラスト/阿部結)
(イラスト/阿部結)

 SNSで「売文で糊口をしのぐ大センセイ」と呼ばれるノンフィクション作家・山田清機さんの『週刊朝日』連載、『大センセイの大魂嘆(だいこんたん)!』。今回のテーマは「ネズミ捕り」。

*  *  *

交通違反における東西の横綱といえば駐車違反とスピード違反だが、実はこのふたつ、累犯率が高いと大センセイは睨んでいる。

 Nちゃんという昔からの友人がいる。

 Nちゃんは腕のいいカメラマンだが、どういうわけか、年がら年じゅう駐車違反でキップを切られている。

「Nちゃん、そんなとこ止めないでちゃんとコインパーキング探しなよ。また駐車違反とられるよ」

「だいじょうぶっすよ、だいじょぶ、だいじょぶ」

 取材が終わってNちゃんが車を止めた場所に戻ると、たいてい車があった場所に、「○○警察署に出頭せよ」とチョークで書いてある。

「ヤマダさーん、またやられました。ひどいですよ。こんな重い機材持って電車で帰れって言うんですか。ひど過ぎる。今月お金厳しいのに、ひどいと思いませんか?」

(思いません。だから言ったぢゃありませんか)

 大センセイ、すんでのところでNちゃんを非難する言葉をのみ込んで缶コーヒーをおごってあげたりするのだが、よくまあ、何度も何度も同じことをやらかすものである。

 だが……かく言う大センセイも、実は懲りない面々の一員、スピード違反の常習犯だったのだ。

 忘れもしない、一発目のスピード違反は、子供の頃から憧れていたスポーツカーを月賦で手に入れた当日の出来事であった。

 別大国道という、海岸沿いの眺めのいい国道を走り始めて五分もしないうちに、道路脇に設置された黒っぽい箱が、突然、パシャッと光ったんである。

「なんだ、いまの?」

 数日後、警察署に出頭せよという通知が届いた。恐る恐る出かけてみると、キャビネ判ぐらいの白黒写真を見せられた。そこには愛車のフロントガラスが鮮明に写っており、右上には撮影の瞬間の時速が記録されている。オービス(自動速度違反取締装置)という奴に引っかかったらしい。

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山田清機

山田清機

山田清機(やまだ・せいき)/ノンフィクション作家。1963年生まれ。早稲田大学卒業。鉄鋼メーカー、出版社勤務を経て独立。著書に『東京タクシードライバー』(第13回新潮ドキュメント賞候補)、『東京湾岸畸人伝』。SNSでは「売文で糊口をしのぐ大センセイ」と呼ばれている

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