──過去6年間のMVを観返してみて、あらためて実感したことはありますか?

星野:いわゆるMVらしいMVがひとつもないなと思いました(笑)。

──それは練りに練って作ってきたことの証しですよね(笑)。

星野:19歳とか20歳の頃、スパイク・ジョーンズやクリス・カニンガムといったディレクターが作る独創的なMVを、ビデオテープが擦り切れるくらい観ていたタイプなので、いかにもMVらしいMVにはあまり興味がなくて。むしろ今、みんなが自力で作ってるショート動画のほうが親近感がある。アイデアが見えるじゃないですか。

 例えば「恋」のMV──ひとつ前のMV集に入ってますけど──は、明らかに通常のヒットチャートに入ってるような曲のMVではないですよね。一つのアイデアと一つのセンスだけで勝負している。今回のMV集に収録している「Family Song」や「不思議」「喜劇」もそうですし、僕の楽曲自体がそうだと思いますけど、訳のわからないものがポップスに擬態してるような感じなのかなと。僕の音楽も、気を抜いて聴いたらわからないけれど、実は全然ポップスじゃない。MVにも流行りのエッセンスはまったくと言っていいほど入っていないので、そういうところをぜひ観てもらいたいです。

──流行とは無関係に、自分のやりたいことをひたすら突き詰めるという傾向は、最近ますます顕著かもしれません。

星野:基本的に自分のやりたいことが、世の中とはズレてるんだなということをあらためて感じました(笑)。それを楽しんでくれる人がいたらいいな、みたいな感じです。

(構成・門間雄介)

AERA 2023年2月20日号