そして今年、5年目は『ねずみ』『付き馬』『帯久』『意地くらべ』『中村仲蔵』。くたびれた。もう一度言います。くたびれまくった……。初演といえど無様な高座は見せられないですから、ひたすら毎日歩きまくって稽古。職質もされました。「わたし、五夜なんです!」「は? いーから身分証出して!」というやりとりを何度したことか……。

 ようやく5年で完結……と思ってたら、担当者から「来年はサプライズで七夜!」と提示されました。え? なに勝手にサプライズってんの? それに六は? 「新元号になりますし、キリよく七で!」。意味わからない! 「さすがに初演はきついですから、今までの集大成でいきましょう」という趣旨でお互いまとまってたのですが、五夜千秋楽、トリネタの『中村仲蔵』が終わってカーテンコール。「えー……来年は七夜で、初演はなし……のつもりでしたが……ちょっと考えてみます!」と、笑っている私。お客様は無責任に拍手喝采……。俺のバカ! なに調子乗ってんだよ!!

 一体、来年はどうなるのでしょう? そして私の『シーズンオフ』はいつ訪れるのか? 今は、泥のように眠りたい。

週刊朝日  2018年11月23日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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