今季のフィギュアスケートの戦いが本格化している。平昌五輪銀メダリスト宇野昌磨(20)は10月27日、グランプリ(GP)シリーズ第2戦のスケートカナダでショートプログラム(SP)2位からフリープログラム(FP)で挽回(ばんかい)し、逆転優勝を飾った。宇野は五輪、世界選手権、GPファイナルと何度も表彰台に上がっているが、トップに立つことはなかった。だが、今回の勝利で、ジャンプの技術はもちろん、表現力にも定評がある宇野が、いよいよ羽生結弦(23)に代わって、男子フィギュアスケートのトップに君臨するのでは、という声が上がっている。
羽生は言わずと知れた五輪2連覇の絶対王者であり、そう簡単にその座を譲るとは思えないのだが……。フィギュアスケートを取材するライターはこう解説する。
「ジャンプの数や種類、音楽の種類と、実力的には昨年から宇野選手が羽生選手を抜いています。ただ、羽生選手は勝負へのこだわりがすごい。それに負けず嫌い。彼はそれで勝ってきました。羽生選手は引退を意識しているのか、今季にかける気持ちが半端ない。羽生選手は自身の“王朝”を脅かす選手には、圧倒的な演技で“潰し”にきます」
元フィギュアスケート選手の渡部絵美さんは、判断は難しい、と前置きし、2人の魅力をこう語る。
「羽生選手は演技から観客を引き寄せる力を感じますし、宇野選手には『ファンが宇野選手を守ってあげたい』という雰囲気があります。両者とも素晴らしい」
羽生の時代から宇野の時代に交代する可能性はあるのでは……。しかし、前出のライターは宇野にこう注文をつける。
「宇野選手は自分の感受性を大事にする。トップを奪ってやろうという欲や闘争心があまりない。周囲をやきもきさせています」
12月のGPファイナルや日本選手権が、覇権争いの舞台となりそうだ。(本誌・大塚淳史)
※週刊朝日 2018年11月16日号