最後は女性の働きやすさなどについて。「育児をしている女性の有業率」は地域差が大きい。上位は島根、福井、高知など。神奈川や埼玉など都市圏で低くなる。島根県の男女共同参画室の担当者はこんな見解だ。
「祖父母と暮らす3世代同居率が高く、子どもの面倒を見てもらえる。育児をしながら働くのは当たり前という意識が強いです」
女性管理職の増加は政府も目標に掲げる。「管理的職業従事者の女性比率」は山口や長崎、岡山が高い。
「こうしたところは新しいことを受け入れていく県民性で、女性の教育にも熱心です。男女の平等意識も強い」(『出身県でわかる人の性格』の著者で出版プロデューサーの岩中祥史さん)
子育てのしやすさでは意外な結果がわかる。「育児休業等の制度利用率」を男女別に見ると、男女ともに高いのは東京。これは予想しやすいが、注目すべきは青森の男性が9.3%に上ること。青森県はイクメンが多いのだ。
「お父さんが出稼ぎに行き、お母さんが仕事や家庭でも中心的な役割を果たしてきた。お母さんの存在感があるので、お父さんも育児で何とかしようという意識があるのでは」(青森県統計分析課の担当者)
今でも結婚や出産をきっかけに退職する女性は少なくない。「結婚のため」離職した割合が高い奈良は、専業主婦率が全国トップ。奈良県女性活躍推進課の担当者は、「大阪のベッドタウンのため、男性が県外で働き、女性が家事や育児などをする役割分担の意識が強い」という。
「出産・育児のため」離職した割合は香川9.3%。一番低い富山の3倍にもなる。香川県では再就職セミナーを開くなど、対策を進めている。県からセミナーなどを委託されているNPO「わははネット」(高松市)の中橋惠美子理事長は、離職の背景についてこう語る。
「四国は転勤族が多く、子育てに手を貸してくれる人がいないことがある。物価が安く、うどんは外食でも1杯数百円。共働きしなくてもやっていけると考え、退職する人がいるのではないでしょうか」
ここまで見てきたように、地域ごとに働き方は大きく異なる。少子高齢化が加速し、シニアや女性の活躍がますます求められるなか、労働条件の見直しも必要だ。それぞれの地域の特色を知って、みんなが働きやすいようにしていきたい。(本誌・吉崎洋夫)
※週刊朝日 2018年11月9日号より抜粋