北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表
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(イラスト/田房永子)
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 作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は医大の不正入試問題と「男のルール」について。

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 東京医科大は、今年の差別入試での不合格者50人の入学を認めるらしい。50人! 定員120名の医学科で、この人数は衝撃だ。

 今年の東医の合格者は241人。うち女性の合格者はたった43人だった。被害者50人を仮に全員女性とし、合格者の約半数が入学すると単純計算すれば、女性45人、男性70人くらいが「適正」だったということになる(実際は女性23人、男性97人だった)。

 当事者によれば、東医には、女子が入りにくいイメージはなかったという。ここ数年の女性合格者は安定して全体の3割を超えていて、それは他大に比べても「女子がフツーに入ってる」ように見える。東医は2006年からの不正を認めているので、不正をしてもなお「公正」に見えるほど他大の割合が酷いという話なのだが、それにしても不思議なのは、なぜ東医は今年急に男女の合格比率に5倍の差をつけるほどの、これまでとは明らかに規模の違う差別をしたのだろう。

「50人」という数字に衝撃を受け、ふと思った。東医の先生たちは怖かったのではないか。女性が全体の4割を超えることが。既に今、3割超えた状態が苦痛だったのではないか。

 8年前、政府は「2020年30%」という数字を閣議決定した。20年までにあらゆる分野の指導的立場に女性が30%を占める、という目標数値だ。そこにはもちろん、医師も入っている。「黄金の3割」という理屈で、例えば10人の大臣のうち1人しか女性がいなければ、お飾りに見え、彼女の意見は「女性の意見」として捉えられる。2人になればお飾り感は薄まるが、「個」としてはまだ捉えられにくい。3人になってようやく硬直した組織に変化が生まれるという理屈だ。ちなみに当時の女性医師の割合は18%だった。

 女性が少数派である限り保たれる「男のルール」というものがある。医学部だけでなく、企業でも思い当たることは多いだろう。

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