先の八木橋氏によると、相続税対策の柱になるのは「生前贈与」と「死亡保険金の非課税枠の活用」の二つ。とりわけ「死亡保険金の~」は税制上の制度として金額が決まっているので、使わない手はないという。相続人が保険金を受け取る場合に限って「500万円×法定相続人の数」が非課税になる(先の4人家族の場合、500×3=1500万円)。
ところが、である。これから非課税枠を使おうとすると「困難」が待っている。これまでの常識に従って「円建て」商品から探していくと、なかなかいい商品が見つからないのだ。
非課税枠の活用に向いているのは、生涯にわたって保障が継続する「終身保険」。ここからは法定相続人1人あたりの非課税枠を意識して、「(会社の定年である)60歳加入、死亡保険金500万円」(男性)の終身保険で見ることにしよう。
各社から様々な商品が出ているが、保険ショップ「保険クリニック」に21社が出す商品パターン1千超を瞬時に比較できるシステムがあると聞き、協力を仰いだ。今販売されている商品で保険料が安いものは、ほぼ網羅されているという(商品ごとで条件が異なっている場合があるが、省略)。
さて、「困難」の中身である。非課税枠の活用に一番利用されるのは、最初に保険料を全部納めてしまう「一時払い」だ。ところが、例えば大手生保が出している一時払終身保険に加入しようとすると、保険料は何と「497万2950円」。死亡保険金との差は、わずか「2万7050円」なのである。
保険に詳しいファイナンシャルプランナー(FP)の畠中雅子さんが言う。
「さすがにこれでは、積極的に加入しようという気になりにくいのではないでしょうか」
ならば、毎月保険料を納める「月払い」ならどうか。安い順ベスト3の保険料は「月額1万6080~1万7505円」だった。月額だと気づかないが、払い込み保険料の総額を見ていくと驚く。何と80歳代半ばで保険金より多くなってしまうのだ。以後は保険料を払う分だけ損をしてしまうので、平均寿命の延びを考えると加入しないほうがいいだろう。