昔の作品を再上演しても、前回と今回は違う。昨日と今日でさえ違う。それが生身の人間が演ずるということだと思うね。毎日やってたって、同じ芝居はふたつとない。見ているお客さんも毎日違う。
一番の評価は、その一瞬一瞬のお客さんの反応です。終わってから考えて悩んで、何かつかめたとしても、昨日のお客さんに明日もう一度笑ってほしいと思ったって、もう間に合いません。
その一期一会の醍醐味は、芝居にしかないと思うね。
――最後に、これからの演劇界と自身の展望について聞いた。
これからの演劇界がどう変わっていくか、それはわからないね。人生100年時代だそうですからね。声と足腰の続く限り、舞台に立ち続けたいと思ってますよ。
若手の育成なんてことは、これっぽっちも考えてません(笑)。若い世代の公演も、自分が演出していれば見るけど、関係ないときに演技指導なんてしません。自分でやりなさい。自分でつかみなさい。私がそうだったように。
そりゃそういうもんだよ。育ってくれりゃいいなとは思うけど。自分で「育つ」しかないんですよ。芝居は努力と人生経験からしか生まれないんですから。
(聞き手 浅野裕見子)
※週刊朝日 2018年10月26日号