ところで、安倍政権での内閣、党人事だが、沖縄県知事選に大敗したこともあってか、守勢で内向きな改造であった。石破派の山下貴司氏や、これまで鬱陶しがっていた片山さつき氏などを起用したが、麻生太郎氏の留任には国民の多くが納得できないはずだ。決裁文書の改ざん、隠蔽などで、財務省に対する国民の信頼を失わせた責任者は財務相である。その麻生氏を辞任させなかったのは、おそらく自民党総裁3選のために麻生派の票が必要だったためだろうが、国民の反発を受けるのを承知で、なぜ麻生氏を留任させたのか。理解できない。
もう一つ、安倍首相は、次の国会で憲法改正案の提出を目指す、と強調している。そして、改憲案を促進させるために下村博文、加藤勝信両氏を起用したようだ。だが、安倍首相が唱える、憲法9条の1項、2項をそのままにして自衛隊の存在を明記するというのは、どう考えても矛盾している。朝日、日経、読売など各新聞社の世論調査ではいずれも、次の国会で改憲案を提出するのに対しては反対が多い。それに、公明党は、次の国会での提出は、はっきり言って反対である。仮に、国会で改憲案を成立させても、国民投票では反対が賛成を上回るのではないか。
そうなれば、安倍内閣は崩壊し、自民党自体が揺らぐ恐れがある。本気で憲法改正をするつもりならば、自民党議員たちはそれぞれの選挙区で、地元の人々に対して懸命に説くべきである。なぜ憲法改正が必要なのか、憲法を改正することで日本がどのようによくなるのか、国民にどんなメリットがあるのか。ところが、ほとんどの自民党議員は憲法について説くどころか、憲法に触れるのを避けている。これでは憲法改正などできるわけがないではないか。
※週刊朝日 2018年10月19日号