刺身に“容積”は似合わないが、容積を使わざるをえないデカさ。殿様が通う定食屋(そんなのあるか)が出す刺身の大きさ。
箸で持って重く、口に入れると口からはみ出る。
サダオカンゲキ(ヒデキカンゲキと同じ叫び)。
形式としてはそのへんの定食屋と同じスタイルだが、そのへんの定食屋の定食と比べると値段は何倍も高い。
だが実質は2倍以上。
何しろ“殿様の定食屋”であるから何事もゆったり、値段もゆったり。
食べる気分もゆったり。
ぼくはいつもの定食屋でいつもの刺身定食を食べるときは常にセコセコ、刺身の一切れの大きさと枚数とゴハンの残量の按配に苦慮していたのだが今日ばかりは余裕しゃくしゃく、
「もしかしたら刺身余るかもしんないな」
の心境で牡丹御膳を食べるのだった。
築地ならではの魚の丸ごと煮。
築地ならではの刺身の大きさ。
築地ならではのゆったり気分。
「築地ならでは」を満喫した一日でした。
※週刊朝日 2018年10月12日