快適な見え方が損なわれるとQOLが低下し、ときには要介護の要因にもなることがわかってきた。高齢者の介護問題を研究する、浦和大学短期大学部介護福祉科の林雅美さんが次のように指摘する。
「老眼が進むと、近くを見てから遠くを見るピント調節機能が落ちてきます。つまずきを防ぐためにも足元がしっかり見えるだけの老眼対策はしておいたほうがいいと思います」
林さんは愛知県のある地域に住む活動的な高齢者70人(平均年齢77.5歳)に視力検査を実施。併せて見え方がどうか、日常生活に支障があるかなどのアンケートを行った。
その結果、「遠くが見える」より「近くが見える」ほうが、生活に不自由しにくいということが判明した。
林さんによると、歩行中に高齢者が見ている距離は1.5メートル前後。その距離をしっかり見えるようにしておくことが、転倒予防につながるという。
「段差や障害物に対する認識や段差を越える運動能力の低下など、転倒の要因にはいくつかありますが、見えていないことで段差などを確認できないという要素も大きいのです」(林さん)
順天堂大学眼科先任准教授の平塚義宗さんは、国民生活基礎調査をもとに介護が必要になった原因を調べた。
「視覚・聴覚障害が直接的な要因となっていると考えられるのは、全体で8番目ですが、骨折・転倒は視力の低下が危険因子ですし、認知症に視覚障害が加わると、身体の機能障害が起こるリスクが3~6倍になります」(平塚さん)
しかし、メガネをそのつど作り替える人はまだまだ少ない。やはり、「メガネは一度作れば大丈夫」という思い込みが、適切な視力矯正をはばんでいるという。
「現在、日本では5千万~6千万人の人がメガネを使っているといわれていますが、このうち適正な視力矯正ができていない人の数は相当数いるのではないでしょうか」(同)
では、どのような状況になったとき、度数が合わなくなってきたといえるのか。梶田さんは次の二つのポイントを挙げる。
▼スマホや携帯を、いつもより目から離さなければ見えなくなった
▼最近、目が疲れるといった症状が出てきた