夫婦で検査してみると、「妻のほうが重症だった」というケースも珍しくない。夫婦の間でも、いびきを指摘するのは気が引けるもの。前出の男性も、SASの症状の一つである夜間頻尿で目が覚めたときに、妻のいびきに気づいたものの、気遣って黙っていたようだ。

 耳鼻咽喉(いんこう)科の専門医で慶友銀座クリニックの大場俊彦院長は、『いびき女子、卒業!』(主婦の友社)の著書があり、女性こそ注意するよう呼びかけている。

<「いびきは中高年の男性がかくもの」というイメージが強いため、女性でいびきをかくのは珍しく恥ずかしいことと思われているかもしれませんが、実は、いびきは年齢も性別も問わず起こりうるものなのです>

 女性はいびきについて、家族や友人から指摘される機会が少ない。仮にされたとしても、恥ずかしがって病院に行きにくいものだ。

「いびきが単純なものだといいのですが、SASの場合は決してそのままにしてはいけません。勇気を出して、きちんと対策をとることが大切です」(大場院長)

 冒頭の会社員男性のエピソードでもわかるように、SASは心臓病など命に関わる合併症につながる。健常者と比べて脳卒中は4倍、狭心症・心筋梗塞(こうそく)は2~3倍、リスクが高まる。あなどっていると突然死しかねないのだ。

「SASは低酸素状態を繰り返すので心臓に負担がかかり、不整脈や狭心症を起こします。寝ている間も交感神経がずっと緊張状態にあり、血圧が高くなったり、インスリンという血糖を下げるホルモンが効きにくくなったりします。やがて糖尿病や、動脈硬化から心筋梗塞、脳梗塞になります」(村田院長)

 男性も女性も、チェックリストを確認してみよう。いびき以外に二つ以上当てはまれば、SASの可能性があるので病院で相談したほうがいい。

 SASになりやすい人は、口を開けて「あー」と発音したときに、口蓋垂(こうがいすい=のどちんこ)が見えにくいという特徴もある。自分ののどを見ておきたい。

 SASのメカニズムも説明しておこう。

 SASには閉塞(へいそく)性と中枢性があり、9割が閉塞性だ。寝たときに筋肉が緩み、重力によってのどの奥が落ちることで気道が狭くなり、低呼吸や無呼吸を起こす。ほかにもへんとうの腫れや肥満が原因で気道をふさぐこともある。少数の中枢性は、脳から呼吸筋に指令がうまく届かなくなることで起きる。

 閉塞性の患者は、驚くほど大きないびきをかくことがある。

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