腹腔鏡手術の技術があるかどうかの一つの目安となるのが、日本内視鏡外科学会が定める技術認定だ(※写真はイメージ)
腹腔鏡手術の技術があるかどうかの一つの目安となるのが、日本内視鏡外科学会が定める技術認定だ(※写真はイメージ)

 手術の方法として普及している腹腔鏡手術。出血のリスクが高い肝がんは、ごく一部の手術でしか保険が適用されていなかったが、現在はほとんどの手術で保険が適用される。その意義は大きいが、注意点もある。

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 がんを取り除く確実な方法は、手術だ。手術ができるかどうかは、全身状態や転移の有無などによって決まるが、肝がんはそれに加えて、がんの個数と肝機能の状態がカギとなる。

 がんとその周囲の肝臓の組織を取り除く「肝切除術」は、がんが3個以内であれば、腫瘍の大きさに関わらず選択できる。さらに肝機能の状態が比較的保たれていることが条件となる。肝がんの患者はほとんどの場合、肝硬変や肝炎など肝臓の病気を抱えている。肝臓の病気によって肝機能が低下した状態で手術をすると、致命的な術後肝不全を起こす危険性がある。

 肝臓は大きく「左葉」と「右葉」に分かれ、左葉はさらに「外側区域」と「内側区域」の二つに分かれる。右葉は「前区域」と「後区域」に分かれる。この区域をさらに細かく八つのブロックに分けたのが「亜区域」だ。

 肝臓は再生能力が高いため、肝機能が保たれていれば大きく切除しても、ほとんどもとの大きさに戻る。がんが大きく、肝機能がよければがんのある葉や区域ごと切除する「葉切除」や「区域切除」ができる。一方、がんが小さく、肝機能が低下している場合は、1ブロックだけを切除する「亜区域切除」やがんがある部分だけを切除する「部分切除」が実施される。

■腹腔鏡でできる範囲が拡大

 手術の方法には、開腹手術と腹腔鏡手術がある。従来、腹腔鏡手術で保険が適用されていたのは「部分切除」と「外側区域切除」だけだったが、2016年に適用の範囲が広がり、ほとんどの肝切除術で実施できるようになった。

 腹腔鏡手術は、腹部に開けた数カ所の小さな穴からカメラや手術器具を挿入して、モニターを見ながら操作する。開腹手術に比べて傷が小さく、回復が早いのが利点だ。腹腔鏡手術はほかのがんの手術でも普及しているが、国立がん研究センター東病院肝胆膵外科長の後藤田直人医師は「肝切除術ではその利点がさらに大きくなる」と話す。

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切開する部位は