「もし今回の地震が真冬に起きていたら、さらに多くの死者が出ていたかもしれません。これまでの大規模集中型の発電所を見直し、消費地の近くに分散配置する必要があります。分散型だと、停電してもダメージを受ける地域は限られる。デンマークやドイツでは分散型に移行し、停電の発生率も低くなっています」

 今回は泊原発の外部電源がすべて使えなくなるという局面も発生した。非常用ディーゼル発電機で、使用済み核燃料プール内の冷却を維持できた。原発のリスクを改めて思い起こさせた。

「大災害時には複数のトラブルが発生するものです。外部電源喪失に何らかの人為ミスが加われば、恐ろしい事態になりかねません。政府や北海道電力は、たぶん原発が動いていれば広域停電は起きなかったと言いたいのでしょう。しかし、原発自体が大きな揺れで自動停止する可能性があるので、説得力がありません」(飯田氏)

 気象庁によると、北海道で最大震度7を観測するのは初めてのことで、国内では6例目だ。巨大地震はなぜ起きたのか。

 元東京大学地震研究所准教授の都司(つじ)嘉宣氏はこう解説する。

「北海道は離れた二つの島が地殻活動でだんだんと接近し、合体して現在の姿になったのです。接合部は札幌から苫小牧までの石狩平野になります。東西から押し合う力がかかって起きた逆断層型の地震で、東側の岩盤が西側に乗り上げる格好だったと考えられます」

 震源地の近くに主要活断層帯の「石狩低地東縁断層帯」が南北に走る。だが、政府の地震調査委員会は今回の地震はこの断層帯で発生したものではないとの見解を表明した。

 前出の地震学者、島村氏がこう警告する。

「いままでにわかっていない活断層が起こした直下型地震だったわけです。活断層は全国で6千カ所くらいあると見られていますが、現在わかっているのは2千カ所だけ。上に堆積(たいせき)物などがかぶって見えない活断層が4千カ所もあり、首都圏の真下にも存在する可能性は十分あります」

 震源は地下37キロとやや深かった。もし浅ければ、もっと広範に震度7を記録した可能性もあるという。内陸直下型の阪神淡路大震災(95年)、本大地震(16年)、大阪府北部地震(今年6月)の震源の深さは、いずれも10キロ台だった。

 震源が浅い直下型の地震が首都圏を襲うとどうなるのか。首都圏ブラックアウトは起きないと、断定はできない。私たちにできることは、一人ひとりが今から備えておくことだ。(本誌・亀井洋志、太田サトル、大塚淳史)

※週刊朝日オンライン限定