寿退社、亭主関白、夫唱婦随、良妻賢母……。最近すっかり使わなくなった夫婦に関する言葉は多い。
博報堂生活総合研究所が6月にまとめた「家族30年変化」の調査結果は、最近の夫婦の変遷を映し出す。調査対象は妻が20~59歳の世帯。家庭の総合的な決定権をだれが持っているかについて、「主に夫」が約39%で、「主に妻」が約30%。昭和最後の時期の88年以降、夫の比率は下がり続ける。「妻は強く、夫は弱くなった30年」と同研究所。
夫の収入は90年代後半をピークに下がっており、内濱大輔・上席研究員は「家庭内での夫の発言権が弱くなった一因ではないか」とみる。また、「夫婦それぞれの自立性が高まり、男女の差がなくなり、個人と個人でつき合う意識になった」という。
調査で理想の夫婦像の移り変わりも浮かび上がる。
亭主関白、友達夫婦、カカア天下の三つの選択肢から、夫と妻の双方に理想像を聞いてきた。夫側で88年に最も多かったのは、亭主関白で約50%。次いで、友達夫婦約39%、カカア天下約9%と続いた。しかし、亭主関白は右肩下がりで、18年は約18%。友達夫婦は約65%まで増えた。
結婚すると妻は寿退社で家を守り、夫は稼いで亭主関白をめざす。それが昭和の夫婦像の一つだった。現実は妻の尻に敷かれるカカア天下も多かっただろう。
対して、平等な友達感覚で、出産・育児期も共働きを続けて家事をシェアするのが平成夫婦の自然な姿。
「歌は世につれ世は歌につれ」と言うが、「夫婦は世につれ世は夫婦につれ」とばかりに、その姿は移り変わる。新元号の時代には、どんな夫婦像が主流になるだろうか。(藤嶋亨)
※週刊朝日 2018年9月14日号