春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。JFN系FM全国ネット「サンデーフリッカーズ」毎週日曜朝6時~生放送。メインパーソナリティーで出演中です。
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。JFN系FM全国ネット「サンデーフリッカーズ」毎週日曜朝6時~生放送。メインパーソナリティーで出演中です。
春風亭一之輔氏の甲子園観戦はどうなった…?(※写真はイメージ)
春風亭一之輔氏の甲子園観戦はどうなった…?(※写真はイメージ)

 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は、「100回」。

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 初めて夏の高校野球甲子園大会に行ってきました。

 今年が100回の記念大会。その日は運良く猛暑も影をひそめ、絶好の観戦日和。満員の観客席もたいへん盛り上がり、高校球児の熱いプレーにこちらの魂も揺さぶられ、本当に行ってよかった甲子園! ……ん? あ……まだ行ってなかった。ここまでは希望的観測。この原稿を書いている時点で7月30日。私は8月6、7日に甲子園へ行く予定でした。だからこれから行くのだな、これから……。

 今年の酷暑、ましてやすり鉢状の球場内はメチャクチャな体感気温でしょう。行く前からちょっとゲンナリ。そもそも私にとって夏の高校野球とは「寄席の楽屋のテレビで、高座前のちょっとの空き時間に、チアガールを目当てに、真打ちのお爺さんたちと、麦茶を飲みながらぼんやりと眺める環境番組」。正直、熱心さの欠片もない私。甲子園に行くことになったきっかけは3カ月前のことです。

 飲み屋で「俺、無趣味なんだよな。なんか楽しい趣味はないかなー?」と弟弟子の春風亭一蔵に相談すると「兄サーンっ!甲子園、どーっすかーっ!? もう、最高っ! 絶対生で観といたほうがいいですよっ! よかったらこの夏、オレと行きませんかーっ!?」とのこと。

 私「んー。行ったことないけどなぁ……暑いんだろ?」

 一蔵「なに言ってんすか!? そりゃ、半端なく暑いですよっ! 特に外野なんか日陰がないから、もう灼熱地獄です!! ハハハッ!!」

 私「何で笑ってんの? ……基本『地獄』って楽しい所じゃないよね? お前は俺を地獄に連れていくのかよ?」

 一蔵「大丈夫。内野席なら日陰になる所もあるんです。だから、常に日陰がどこにあるかを気にしながら、他人より早く先へ先へ移動して席を確保しつつ、忘れずに水分を摂取して、塩分もとりつつ、首筋を冷やしながら、気を確かに持って、歯をくいしばって観れば、あんなに楽しい空間はありませんよっ!!」

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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