鈴木おさむ/放送作家。1972年生まれ。高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。多数の人気バラエティーの構成を手掛けるほか、映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中
子育ては大変…(写真はイメージです) (c)朝日新聞社
放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。鈴木氏は息子が見せた涙をテーマに書く。
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仕事をしながら育児をすることの大変さを、さらに感じています。息子、笑福は3歳ちょっと。言葉もかなり覚えてコミュニケーションを取ることができるようになったので、なおさらに可愛く、また愛しい。
妻は3カ月に一度ほど、約1週間、海外ロケに行きます。僕は妻が出産したあとに仕事復帰を決めて、長期ロケに行くことに悩んでいたときに、この仕事をやらないのなら芸人を引退するべきじゃないかと言いました。やはり妻は体を張って頑張る芸風だし、本人もそれが好きでやってきた。だから、それをやらないのなら、芸人を辞めたほうがいいのではないかと思って伝えたこともある。
出産半年後に復帰し、まず、海外ロケに行きました。それから3カ月に一度ほど。その都度、妻のお母さんが栃木から助っ人に来てくれました。そして僕も仕事をできる限り調整しながら、お母さんと僕で息子の面倒を見る。息子が2歳を超えてからは、妻が海外ロケに行くときは笑福を妻の実家に預けるようにしました。妻の実家は自然に囲まれています。預かってもらってる間、息子は虫を捕まえたり、畑で野菜を取ったり、絶対に都会ではできないことを経験できる。息子も実家に行くのが好きでした。
これまで、妻が海外ロケに行く前に実家に預けに行くと、息子が泣くことはありませんでした。寂しそうな顔はするけど、泣くことはなかった。が、今回。妻が火曜日の夜に出発し、水曜日は僕と二人で海に行く。木曜日に僕が息子を栃木の実家に連れていき、日曜日に東京に連れてきてくれるというスケジュールになっていました。火曜日、妻が出発しようとすると、息子は急に泣きだしました。今まで泣くのは妻だったのですが、初めて息子が泣きました。3歳になり、母親が仕事で離れていくということをより実感できるようになったのでしょう。
妻が出ていき、5分ほどたって涙は止まり、「僕、泣いてないからね」と強がりました。母親が離れて寂しいという感情と、強がりという気持ちまで覚える。
子供ってすごいですね。
妻は言います。「できることならずっと一緒にいたいよ」と。みんなそうなんでしょう。できることなら一緒にいたい。だけど、そうもいかない現実。ブログにコメントをくれた看護師さんは子供がいるけど夜勤でも働かなければならず、気づくと一緒にいられる時間がとても少ない。保育所に入れるために働いて、夜迎えに行って、そのときには寝ていて、朝、また送っていく、という生活を繰り返しているお母さんもいるでしょう。
ママさんたちは、寂しさや働くことのジレンマと闘いながら子供を育てる。この気持ちを、旦那さんがよりシェアできるような社会になるとよいのだろうけど。
※週刊朝日 2018年8月31日号