![旅先で読みたい本(※写真はイメージ)](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/2/b/620mw/img_2bb200f9bc110b4ec6362cc3759af1da30150.jpg)
本好きにとっては、旅に持っていく本を選ぶのもまた楽しいものです。外出しなくても、書物によって旅を味わうこともできます。立命館アジア太平洋大学(APU)学長の出口治明氏が旅先で読みたい本として選んだ3冊は?
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■出口治明学長が読みたいベスト3
(1)『ハドリアヌス帝の回想』
マルグリット・ユルスナール著 多田智満子訳 白水社 3200円
(2)『マハーバーラタ』第1~8巻
上村勝彦訳 ちくま学芸文庫 品切れ
(3)『王書 古代ペルシャの神話・伝説』
フェルドウスィー作 岡田恵美子訳 岩波文庫 品切れ
■選書の理由
いずれも遺跡をめぐるときの本です。『ハドリアヌス帝の回想』は30代のときに出会ってから、いまも僕の座右の書です。これまで何度も読んできました。古代ローマ帝国の皇帝ハドリアヌスは、終生にわたって帝国の辺境を旅します。作家ユルスナールは、旅を終えた皇帝が人生を振り返りながら、後継者に書簡を出すという構成にしました。詩人多田智満子さんの訳は硬質で美しい。
この本を読みながら、ハドリアヌス帝が最後に建てた別荘ヴィラ・アドリアーナをめぐるのはどうでしょう。そこには皇帝が旅の思い出を景色として残そうとした美しい遺跡があります。旅が人生を豊かにすることがわかるでしょう。
旅行にもっていく本は軽くて小さい文庫本に限ります。インドに旅するなら『マハーバーラタ』です。上村勝彦さん訳のものがとてもわかりやすい。全11巻ですが、残念ながら完訳の前に上村さんが亡くなられてしまった。1週間の旅なら、8巻のうちのどれか1冊をもっていくのがちょうどいい。
『マハーバーラタ』は、僕が30代のとき『筑摩世界文学大系 インド集』で一部を読みました。全訳はその後、レグルス文庫で読みました。インドの遺跡が生々しく見えてきます。
『王書』はいってみればイランの『古事記』であり『平家物語』です。学生時代に初めて読みました。イランには何度も行っています。あるとき食堂の壁にロスタムらしき絵が描いてありました。『王書』でその名を知っていたので、そのことをお店の人に伝えると、ビール(イランはイスラム圏なのでノンアルコールビール)をおごってくれました。この本を手にして、ペルセポリスの遺跡をめぐるのは、なんとゾクゾクする時間なのか。
最後に、旅のアドバイスを。僕はサラリーマンだったときから世界中を旅していました。休みを取るコツはチケットをとったらまず上司に報告してしまうことです。「安い日程への変更が利かないチケットをとってしまいました」と。
旅と本は人生の必需品です。
■プロフィール
出口治明(でぐち・はるあき)=1948年生まれ。ライフネット生命保険創業者。著書に『全世界史(上下)』『「全世界史」講義(I II)』など。
※週刊朝日 2018年8月17-24日合併号
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