さらに3回目が、配偶者が死亡し、1人分の年金生活がスタートしたときだ。現在の日本の年金制度では、夫が40年間サラリーマンとして働き、妻が専業主婦という夫婦の場合、年金支給額は月約20万~25万円程度。40年間、年金を納めたとして、夫と妻の老齢基礎年金は約6万5千円ずつ。夫の老齢厚生年金は12万円とする。この場合、夫婦2人分を合わせた支給額は25万円となる。

 だが夫が先立った場合、夫の年金分から妻に支給される対象となるのは、老齢厚生年金のみ。それも、全額ではなく4分の3の金額が「遺族厚生年金」として妻に支給される。前述の例で言えば、老齢厚生年金12万円の4分の3=9万円となる。つまり、夫が先立った場合、妻の年金額は15万5千円と、夫婦2人のときから10万円近く下がってしまう。

 老後資金を計算して、毎月夫婦で使える額を算出してみると、子どもが住宅を購入するための数百万円の援助や、万単位で消費する子ども家族との旅行の費用負担などは、身の丈に合わない桁違いの出費だとわかるだろう。

「退職金が入ると、気持ちが大きくなり、つい子や孫にもまとまった額を渡してしまいがち。だが、退職金は、ご褒美ではなく、老後資金と捉えるべきです」(深田さん)

(本誌・松岡かすみ)

週刊朝日  2018年8月17‐24日合併号より抜粋

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