伊調馨さん (c)朝日新聞社
伊調馨さん (c)朝日新聞社

“伊調10月復帰”の大きな見出しが一面に躍っていたのは、7月9日付のスポーツニッポン紙だった。

“東京五輪出る!! パワハラ問題乗り越え 見えた5連覇の道”の小見出しもあり、2020年に関して、口を濁してきた伊調馨(34)がいよいよ本気で目指すのだな、と思った人も多いだろう。しかし記事を読むと、彼女が現在練習している日本体育大学の松浪健四郎理事長の言葉がベースになっていて、当人の最近の言葉は出てこない。

 パワハラ問題は今年1月、“代理人”による内閣府の公益認定等委員会への告発があり、それが3月に表面化。4月には栄和人氏による「パワハラがあった」と認定され、同氏は日本レスリング協会の強化本部長を辞任。同協会の常務理事、至学館大学レスリング部監督も解任され、告発側の完勝に終わったが、当の伊調が公の場で発言することがないまま今に至る。

 恩師を告発、という後味の悪さがあることは想像に難くないが、それだけではないらしい。

 最近の日本のレスリングは吉田沙保里と伊調を筆頭に国際舞台での女子の活躍が目立ち、彼女らを育てた栄氏も認知された存在になっていたが、一方で男子の影は薄い。

「男子側と話していると、競技人口が違う、メダルの価値が違う、という気持ちがあるように伝わってきます。栄さんに対し、男子を強くしたのなら認めるけど、偉そうにするなよ、という反感が日体大OBの中にもあった。東京五輪まで任せたくない、というムードがあったんです」(五輪担当記者)

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