臼井氏が学長に就任して半年後、医学博士号授与をめぐり教授たちが医局員らから謝礼として現金を受け取ることが横行していた問題が発覚した。直後、臼井氏は「あしき慣例が続いていた。再発防止を図りたい」と謝罪したものの、その翌日には、当人も10年以上にわたり受け取っていたことがわかり、あっさり認めていた。さらに、2010年には、当時の教授と准教授が生体肝移植を受ける患者らから寄付を求めていたことでも問題になり、学長であった臼井氏は責任を追及される立場にあった。
過去の対応を見る限り、確かに脇は甘いのだが……。
臼井氏が今回の事件で、佐野容疑者に依頼したのは、文科省の私立大学支援事業「私立大学研究ブランディング事業」の選定だ。その狙いはどこにあるのか。
私立大学運営に詳しい大学通信の安田賢治常務は、支援事業についてこう説明する。
「近年、各私大に割り当てられる助成金は年々減っている。大学からすると同事業で文科省から競争的資金を得たい。事業自体の競争率が高く、選ばれれば対外的に研究力の高さを打ち出せる。それと、いわゆる文科省『お墨付き』の研究を始めることができるわけですから、研究者もそれで論文を書けば箔がつく」
16年度に東医は落選。17年度には選ばれ、特別補助として年3500万円を5年間受けることができるようになった。関係者によると昨年は経営状態が大幅に改善したというが、今回の事件で雲行きは怪しくなってきた。
7月には学長選を控える東医。なぜ、このタイミングで臼井枠が問題となってしまったのか──。(本誌・岩下明日香)
※週刊朝日 2018年7月20日号