「集学的治療でも、とくに『手術』『放射線』『薬物』の三つのなかから最適な組み合わせを選ぶ方法については、医師の考え方や病院の方針により意見が分かれることがあり、どの治療法がベストかを患者さんが判断するのは難しいかもしれません。病院選びのポイントとしては、それぞれの治療をおこなう診療科同士の連携がしっかりとれていること。手術、放射線、薬物、それぞれの専門医がそろっていて治療実績があることに加え、それらを組み合わせた集学的治療の件数が多い病院は各診療科の連携がとれている可能性が高いと考えられます」(堀之内医師)

 近年、肺がん治療のうち放射線療法や薬物療法は、ほとんどが外来診療でおこなわれる。手術をする場合も、一般的な肺がんの手術では術後1週間程度で退院となり、自宅療養後1カ月もすれば、職場復帰が可能なことが多い。肺がんと診断されて「仕事を辞めなくては」と考える人も多いが、「診断の時点で決めるのは早計」と堀之内医師は話す。

「外来での治療では、治療日のみ1日、あるいは半日休むだけで済みますし、手術の場合でも有給休暇の範囲で足りることも多いでしょう。仕事について迷ったら、まずは主治医に相談し、治療方針が決まってから時短勤務や休暇などの相談を職場にしても遅くないはずです」(同)

 肺がんに限らず、近年ではがん患者への就労支援が積極的になされている。2018年度から、治療と仕事の両立支援のための取り組みとして、医療機関での就労支援に診療報酬(療養・就労両立支援指導料)が加算された。医療機関と職場が治療計画や勤務情報などの情報を共有し、連携することで患者の治療と仕事の両立をサポートする。

「まだ課題はありますが、がんになっても仕事を続けたいと考えている人にとって、社会的には大きな追い風になっているといえます。困ったときは身近な医療スタッフに相談するといいでしょう」(同)

(ライター・出村真理子)

週刊朝日 2018年6月22日号

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