「放射線治療に使用する機器や治療技術はここ十数年で著しく進歩している」と話すのは、同院放射線治療科の中山優子医師。小さながんに多方向から集中して正確に放射線をあてる「定位放射線治療(ピンポイント照射)」や、複雑な形状をもつ複数のターゲットに対しても自在に線量を調整して投与することができる「強度変調放射線治療(IMRT)」など、新たな治療法も登場している。

「放射線治療では、がんだけでなく正常組織にもダメージを与えてしまうことや、呼吸による肺の動きで正確な照射が難しいことなどが課題とされてきましたが、現在では、正常組織への照射を極力減らすために治療前にCT画像を用いて三次元的に照射法を決定したり、がんが一定の位置に来たときにだけ照射できるシステムなどで呼吸の動きによる影響を減らしたりと、技術の進歩により課題がクリアできるようになりつつあります」(中山医師)

 III期がんにおいては、放射線療法と抗がん剤による薬物療法の併用が標準治療として推奨されており、「全身状態のいい患者さんには同時併用療法をおこなっています」と中山医師は話す。さらに、III期がんにおいて、放射線+抗がん剤による治療後に免疫療法を追加することで、より治療効果が高まるという報告も得られている。追加による効果が確認されているのは「デュルバルマブ」という新しいタイプの免疫チェックポイント阻害薬(抗PD‐L1抗体)で、近い将来、III期肺がんの放射線+抗がん剤による併用療法後の追加療法として保険適用になると見込まれている。

 一方で、集学的治療には注意すべき点もある。複数の治療法を組み合わせるということは、それだけ副作用のリスクが増えるということで、患者のからだへの負担が大きい治療法ともいえる。堀之内医師は、「メリットとデメリットのバランスを考え、その患者さんにとって最適な治療法を検討することが重要」と話す。そのためには病院選びが重要だ。

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