定位放射線治療(ピンポイント照射)(週刊朝日 2018年6月22日号より)
定位放射線治療(ピンポイント照射)(週刊朝日 2018年6月22日号より)
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肺がんデータ(週刊朝日 2018年6月22日号より)
肺がんデータ(週刊朝日 2018年6月22日号より)

「難治がん」といわれる肺がんだが、手術・放射線・薬物による「集学的治療」では、治療技術の進歩により治療効果の向上が期待される。とくに、放射線と薬物の併用療法は、新たな治療法が加わる可能性があり注目されている。

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 集学的治療とは、がんのタイプや進行度に応じて、異なる治療法を組み合わせておこなう治療をいう。肺がんでは、手術、放射線療法、薬物療法を組み合わせる。集学的治療のメリットについて、国立がん研究センター中央病院呼吸器内科の堀之内秀仁医師はこう話す。

「ひとつの治療法だけでは治療効果が十分に得られない場合でも、複数の治療を組み合わせることで効果を高め根治を目指せる。それが強みといえるでしょう」

 非小細胞がんの治療において、I期のがんは手術、あるいは放射線療法のみで根治が可能なことが多く、IV期は薬物療法が主体となる。そのため、集学的治療の対象となるのは、主にII期とIII期といえる。どの治療を組み合わせるかは、がんのタイプや場所、進行度などにより異なる。

 一般的に、「手術+薬物療法」は、II期で手術によりがんを切除した後、再発を予防するために薬物療法をすることが多い。同じII期でも、患者の年齢や持病などにより手術ができない場合は「放射線療法+薬物療法」が選択されることがある。また、手術で完全にがんを切除することが困難になるIII期でも、「放射線療法+薬物療法」の併用療法がおこなわれる。手術後、がんが残存する可能性がある場合は「手術+放射線療法」が選択されたり、そこに薬物療法が加わったりすることもある。これらの中で、近年、とくに進歩がみられるのがIII期のがんにおける放射線と薬物による併用療法だ。

 肺がんの放射線療法には、根治を目指す治療と緩和的な治療がある。根治的治療では、手術と同様に局所治療として、主にI・II期で手術ができない場合に放射線で根治を目指し、III期では薬物も併用する。緩和的な治療とは、がんによる症状を軽減するために放射線を照射する方法で、骨に転移した場合の痛みや脳に転移した場合の頭痛、吐き気、神経症状、進行した肺がんによる息苦しさや痛みなど、さまざまなつらい症状を緩和するためにおこなう。

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