初女さんが凜としていたのは、まず歩き振りです。音もなくリズミカルに足を運ばれます。顔の艶がいいこともありますが、凜として老いることのポイントは歩き方にあります。

 私が関わるシンポジウムに演者として来ていただいた宗教学者の山折哲雄さん(87歳)も、凜として老いていると感じさせる方です。会場に入って演台に立つ時の歩き方がいいのです。京都にお住まいの山折さんは、その頃は早朝の洛中を作務衣姿で1万歩近く歩くのが日課だったというのですから、さすがです。

 もう一人、歩く姿に感銘を受けたのが、92歳で亡くなった伊那谷の老子こと、加島祥造さんでした。一度いっしょに天竜川の土手を歩いたことがあるのですが、私より一回りも年上だというのに、足には自信があった私がどんどん置いていかれました。背筋をしっかり伸ばして、やはりリズミカルな歩き方です。その後ろ姿を見て、ふと思ったのがサン=テグジュぺリの星の王子さまでした。老子と星の王子さま、どこかにつながりがあるのかもしれません。

 リズミカルなウォーキングの効果が最近、明らかになってきています。リズム運動が脳内物質のセロトニンを分泌させて、心身のバランス(自律神経)を整え、さらには脳への血流の促進と刺激が、認知症の予防につながるというのです。

 まずは背筋を伸ばしてリズミカルに歩きましょう。それが凜として老いることの第一歩になります。

週刊朝日 2018年6月22日号

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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