西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修さんが、3年ぶりにキャンプ視察に赴く。
プロ野球のキャンプは、ここから実戦が増えてくる。第5回ワールドベースボールクラシック(WBC)に出場する日本代表選手の動向はもちろん気になるが、私も11日からキャンプ地を回る。3年ぶりのキャンプ視察。おそらく色々と変わっていると感じることも多いだろう。そういったこともみなさんに伝えられればと思っている。
ニュース映像などを見ると、どういった動きをしているのか、数値を測りながら、投手ならブルペン投球、野手ならスイングを行うことがより多くなったなと感じる。そのことは素晴らしいことだし、故障につながる変な動き、疲労度などもチェックできる。球種の変化量もどう投げたらどれだけ変わるかといった部分を数値で実感できることは大きなことである。
ただ、数値ばかりに目がいって、自分の体の感覚を磨くことを放棄してほしくはない。試合になれば、数値を気にして投げること、打つことなんてできないし、自分の感覚を信じるしかない。だから、「数値」と「自分の感覚」の差異をどれだけ埋めていけるか。そういった視点を練習の中で常に持っていてほしい。
例えば、1年間、200イニングを投げ切るためにどうすればいいか。今のプロ野球は、首脳陣が、疲れが見えれば次の投手の投入を考えるし、登板間隔もしっかり空けて投げさせてもらえる。ただそれでは選手にとって本当の強さは出ない。試合の流れを読み、出力を抑える部分、逆に勝負所でギアチェンジする部分、自分の中で1試合の中で押し引きをするからこそ、イニング数を積むことができる。
近年感じるのは、3回までの序盤、4回から6回まで、7回以降と考えてみても、序盤の3回までの球速と7回の球速では3~5キロ落ちてしまう投手がいる。トレーニングに関してはいいものがどんどん入っているのに、100球以上投げたらもうガス切れとなってしまう投手がいる。もちろん打者の質が上がり、下位の打者でも気は抜けなくなっている部分もあるだろう。しかし、打者に対する洞察力や、「出力〇%ならこの打者を抑えられる」といった自分のスタミナの使い方、駆け引きといった感覚は失われてしまっているのではないか、とさえ思う。