【田房永子、誰にも言えなかった深刻な悩みとの闘いをマンガ化】


 2000年にマンガ家デビュー後は、実話系雑誌などに売り込みに行き、ルポマンガを描いていた。そんななか、人気が上がってきたのがコミックエッセイ。田房さんにも声がかかった。「そのころ悩んでいた母のことをマンガにしようと考えて描き始めたんです」(田房さん)。それが12年刊行の『母がしんどい』で、ベストセラーになった。

 その後も、子育て、男性社会などをテーマに描いてきたが、田房さんには人に言えない悩みがあった。夫への暴力である。

「これではいけないと真剣に取り組んで、その体験をマンガに描こうと決めました。男性から女性へのDV加害についての本はあっても、男性にキレてしまうことで悩む女性に寄り添う本はない。悩んでいる人に役立つのではないかと思ったんです」

 題材は常に身の回りにあるが、「子供が小学校に入学して忙しい。描きたいことはたくさんあるので、もっと描く時間が欲しい」のが目下の悩みだという。次回作は『お母さんみたいな母親にはなりたくないのに』。今の子育てに自分の母の影響がどう出ているかについて真剣に向き合った作品だ。

■どんな本?
『キレる私をやめたい~夫をグーで殴る妻をやめるまで~』
田房永子著 竹書房 本体価格1000円。
今まで誰にも言えなかった深刻な悩み“夫に対してキレること”をやめるため、セラピーに通うなどして真剣に立ち向かった体験をコミック化。試行錯誤の末に多くの気づきを体験し、穏やかな生活を手に入れるまでをリアルに描く。

■プロフィール
田房永子(たぶさ・えいこ) 1978年、東京都生まれ。2000年にマンガ家デビューし、01年にアックスマンガ新人賞佳作受賞。12年に発表した『母がしんどい』が大きな反響を呼ぶ。『ママだって、人間』『それでも親子でいなきゃいけないの?』など著書多数。本誌連載「ニッポン スッポンポンNEO」(北原みのり)のイラストも手がけている。

(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日 2018年5月25日号

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