“お客様”扱いされる新人でも、全てが希望どおりになるわけではない。研修が終われば、支店や営業現場で下積みをさせられることもある。そうすると、「こんなはずじゃなかった」と辞める人が出てくるのだ。
大手電機メーカーに入った女性も、「企画や国際関係の部署にいつ行けるか見通しがないと転職したくなります」と認める。
「就活や研修中は優しくされていたため、いざ仕事を始めると、イメージとのギャップに悩むようです。卒業後3年ぐらいは『第二新卒』として採用してくれるため、転職先に困らない。辞められる企業にとっては大きな痛手です」(人材コンサルタント)
しわ寄せは課長ら中間管理職に行く。自分たちは厳しく指導されてきた世代だが、新人には優しく接しないといけない。食品メーカーのある管理職は嘆く。
「優秀な新人だと思っていたが、仕事になじめず辞めてしまった。人事部からは対応に問題がなかったのか疑われた。職場では補充がないので、新人の仕事も自分でやるしかなかった」
管理職も大変だが嘆いていても始まらない。新人もいつかは先輩となり、会社に貢献してくれるはず。たくさんの新人を長年見てきた研修担当者は、最近の特徴についてこう分析する。
「周囲の気持ちを推し量るのは、苦手な人が多い気がします。理由がないと動かない。でも、率直で優秀な人も多い。一度学んで納得できたことは的確に実行できるので、尊重して丁寧に向き合うことが大事です」
優しく丁寧に教える上司や先輩の言うことは、きちんと聞いてくれるのだ。
人材会社「ルーセントドアーズ」の黒田真行社長は、新入社員の行動には評価すべき面もあるという。
「働きやすい会社が増えれば、世の中全体にとってプラスになる。管理職に負担が集中するような会社は、人材の生かし方などを根本的に見直すべきです」
無意味な「滅私奉公」を強いてきた企業の悪い点を、改善してくれるのかもしれないのだ。そう思えば、少々の“過保護”は許されるのかもしれない。(本誌・岩下明日香)
※週刊朝日 2018年6月1日号