清水さんの父は最後まで孫とLINEでつながっていた。

「LINEは80代でもできます。簡単なメッセージでも送り合え、頻繁にやり取りできる。老親とのコミュニケーションは、時間の長さより、接触頻度のほうが大切」

 高齢者の暮らしについて情報を発信している「オヤノコト.ステーション」(東京都新宿区)を運営する「オヤノコトネット」の大沢尚宏代表はこう話す。

「世界最速のスピードで超高齢化が進む日本が、高齢者にやさしい国とは思えません。情報弱者にならぬよう、早くから高齢になった親や自分がどういう暮らしやサービスを選択すべきかの知識を増やし、意識を高めることが大事です」

 パソコンやスマホが当たり前の社会。「ホームページに載せていますから」と説明を省かれる機会も増え、シニアが置いてけぼりを食うこともある。

「ついのすみかを探す場合も、子どもが親の気持ちをくみ取って、要望に沿った住まいを徹底的に調べ、探してあげる。これも立派な親孝行です」(大沢代表)

 取材をしながら、自分がどれだけ両親に感謝の意を伝えられているのか自問自答を繰り返した。自分の誕生日に母に電話をかけ、思い切って言ってみた。

「産んでくれてありがとう」

 母はすぐにこう答えた。

「こちらこそ。生まれてきてくれてありがとう」

 やってみたら簡単だった。親孝行って実は簡単でささいなことの繰り返しなのかもしれない。(大崎百紀)

【親も子も満足! 親孝行10の秘訣】(取材に基づき、編集部作成)
○ 手紙より電話、電話より対面で話そう
○ 電話は決めた曜日・時刻にかける
○ 接触の「長さ」より「頻度」が大事(LINEは便利)
○ コミュニケーションを深めて親のニーズをくみ取る
○ 親の「遠慮」と「本音」を見極める
○ 親子で一緒に「思い出」をつくる
○ デジタル弱者の老親を放置しない
○ 親の話をよく聞き、人生を肯定してあげる
○ 思い立ったらすぐに行動に移す
○ 「産んでくれてありがとう」と感謝の意をしっかり伝える

週刊朝日 2018年5月18日号より抜粋

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