間違ったフォームで筋トレをしている人は少なくないという。この場合、目的と違う筋肉を鍛えることになるばかりか、ケガや体の故障につながることもありうる。理学療法士の笹川大瑛さんは、関節運動を正しくできるようになることが、体を傷めず、筋力や筋肉を効果的にアップさせる秘訣だと指摘する。笹川さんの著書『関トレ 関節トレーニングで強い体をつくる』(朝日新聞出版)から、その内容を一部紹介する。
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痛み、ケガ、パフォーマンスの低下は、関節を守る筋力の低下が原因です。
筋トレをがんばっても、関節を守る筋肉を鍛える運動(トレーニング)、略して「関トレ」をしなければ、十分な効果は期待できません。
■筋トレは動作のトレーニングで、関節を守る力はアップしない
昨今はボディメイクのための筋トレが大人気です。パーソナルトレーナーとマンツーマンで取り組む人や、スポーツクラブに毎日通う人もいます。
24時間営業のスポーツクラブも増え、残業で遅くなっても帰宅前にジムに立ち寄るのは容易になりました。
しかし、間違ったフォームで筋トレをおこなっていることは少なくありません。特に多いのが、腰が引けた姿勢で体幹トレーニングをおこなっていることです。本来使うべきお尻の筋肉やハムストリングスがしっかりと使われていません。股関節や腰がとても不安定な状態なのでこうした姿勢になります。
自分では正しくおこなっているつもりでも、実際にはできていないのです。筋トレで確実な効果を上げるには、フォームが大切です。正しいフォームでおこなわないと目的とは違う筋肉が鍛えられたり、ケガにつながったりするからです。
マッチョなボディビルダーでも、バーベルを持ち上げるときに肩をケガする人は意外と多いのです。この原因も同じです。肩関節を安定させる筋肉が弱っているため正常な関節運動ができなくなっているのです。この状態でバーベルを持ち上げると、肩には関節が外れるようなストレスがかかり、痛みやケガにつながります。
■関トレをしなければ、スクワットで膝を壊すことも?
筋トレは「動作のトレーニング」です。たとえばスクワットで重要なのが腰椎と股関節を守る腸腰筋、腹横筋(多裂筋)です。正しいフォームは、この2つの筋肉をバランスよく使い、腰を伸ばして股関節を曲げ、膝がつま先より前に出ない姿勢です。
しかし、腰と股関節を守る力が弱ければ、いくらスクワットをしてもこの正しい姿勢をとることはできず、過度な負担が膝にかかり膝を壊すことになります。関トレで正常な関節運動ができるようになれば、膝に過度な負担をかけることのない正しいフォームになり、筋トレでのケガや故障の予防になります。
必ず関トレをしてから筋トレをしましょう。
◎笹川大瑛/ささかわ・ひろひで
理学療法士。運動理論の研究の傍ら、運動・トレーニング、姿勢改善のセミナーを開催。全国より医療従事者が集まるなど、支持を集める。