「ただし専門医の認定基準も学会によって異なり、簡単に取れてしまう専門医資格もあります。専門医ならすべて安心なわけではないので、どのような資格なのか調べましょう」(同)
■治療と生活を支える病院の総合力を重視
一方、一人の専門家だけでなく、「チーム」の力も欠かせない。がんの場合、手術や放射線治療など複数の治療を組み合わせる集学的な治療がおこなわれ、治療にともなう副作用対策も必要になるからだ。そこで診断や治療の決定に際して、主治医だけでなく放射線治療医や腫瘍内科医などさまざまな診療科の医師、看護師、薬剤師など多職種が検討して決める仕組み(キャンサーボード)があれば、広い選択肢の中からより患者に適した治療を提示できる。治療が始まってからも、チームで患者を支えることでスムーズに治療が進められる。
また、がんになると副作用による見た目の問題、後遺症、お金、仕事、家族や職場の人間関係など「生活」にかかわる問題も発生する。
「安心して治療を続けられるように、相談窓口や人員などサポート態勢も確認しましょう」(山口さん)
近年は高齢化にともなって生活習慣病などの持病を抱えるがん患者が増えている。手術や抗がん剤などは、からだに対する負担が大きく、持病がある人はより慎重な対応が必要だ。持病の種類や病状によっては、受け入れが難しい場合もある。がん専門に特化した病院よりも、持病にも対応した診療科がある総合病院などを検討したい。
病院の機能以外のポイントとして、若尾医師は「通いやすさ」を挙げる。入院だけで治療が完結するのではなく、通院は必須だ。最近は薬物療法や放射線治療はほとんど通院でおこなうようになっていて、治療期間中の移動はからだだけでなく、経済的にも時間的にも負担が大きい。
「まれながんで治療できる病院が限られているなど特殊なケース以外は、無理なく通える範囲で選んだほうが負担は少なくて済みます」(若尾医師)
(文・熊谷わこ)
*週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院2018」より