一方、下位グループには、男女とも「小売業関連」の業種や「印刷・同関連業」「道路旅客運送業」などが並び、超高齢社会を支える「社会保健・社会福祉・介護事業」は男性ではワースト3の一角を占めた。このクラスの生涯賃金は、男性では「2億1千万~2億2千万円」台で、女性は「2億円未満」だ。

 そのほかはご覧のとおりだが、「3億円以上」が男性19・女性5業種、「2億5千万円以上~3億円未満」が男性12・女性9業種、「2億円以上~2億5千万円未満」が男性9・女性17業種、「2億円未満」が女性9業種だった。

 男女ともトップと最下位では2倍以上の格差があるが、意外にも塚崎教授はここでも、業種ごとの差も思っていたほど大きくなかった、とする。

「男性で言うと、トップグループ、例えば生涯賃金3億5千万円以上の業界は、就業者数も少なそうなので『例外』として、その業種を除いて考えましょう。それらを除いて普通のサラリーマンについて見ると、規模別のところでやったように最上位は最下位の約1.7倍とやはり2倍以下におさまります。これが何を意味するか。たとえ下位の業種で働いていても、夫婦共働きなら、2人の賃金を足すと男女の賃金格差を考慮に入れても、上位業種のサラリーマンと同等か高くなるんです。つまり、上位業種でも専業主婦を養っていると、下位業種の共稼ぎ夫婦より所得が少なくなる可能性さえあるわけです」

 塚崎教授がトップグループの業種を「例外」としたことは、業種内での個々のデータのばらつき度合いを示す「賃金分布」を見てもわかる。「航空運輸業」や「各種商品卸売業」「金融商品・商品先物取引業」「保険業」など男性の上位グループで、ばらつき度合いが軒並み極端に大きくなっているのだ。要するに、一握りのものすごい高給の人たちが、上位グループの「平均」を押し上げている可能性がある。

 尾上所長もこう言う。

「賃金分布には、業種内での企業同士の格差と、個々の企業内の格差の両方が合わさって示されています。特に男性の場合でばらつきが大きい業種が上位にあり、それらについては気を付けてみてほしい」

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