6年間にわたり男役トップをつとめ、2014年には宝塚歌劇100周年を支えるトップスターとして活躍した柚希礼音さん。15年5月に行われた退団公演のサヨナラパレードには、劇場前に過去最高となる1万2千人ものファンが集結した。
「私がまだ学生だった頃、舞台を観るときはいつも2階席後方でした。それで毎回“ああ、ここまで視線は届かないんだ”と残念に思っていたんです。だから、自分が宝塚の舞台に立ったときは、一回の公演の中で、会場にいるすべてのお客さまと目を合わせるように心がけていました」
恵まれた容姿や、クラシックバレエで鍛えられた華麗なダンス。ほかにも、彼女がファンを魅了してやまない要素として、卓越したサービス精神と強い向上心があるのかもしれない。それともう一つ――。
「舞台を観ているときはわからなかったけど、相当なボケなんだね。でも、それが不思議と妖艶に見える」
西川貴教さんとダブル主演を務める舞台「ZEROTOPIA」で演出を担当する岸谷五朗さんは、稽古の途中、柚希さんに対してそんな感想を漏らしたという。
「地球ゴージャスの舞台を、これまで観客として観ていたときは、あまりに軽快に会話が進んでいくので、“アドリブが多いのかな?”って思っていたんです。でも実際にお稽古をしてみて、すべてが綿密に練り込まれたものだということがわかりました。私は、関西人とはいえ自分から笑いを取りにいけるタイプではないんですが(笑)、普通なら突っ込んでもらえないキャラクターにも、容赦ない突っ込みが浴びせられるので、結果として、今まで見たことのないような柚希礼音をお見せできるのではないかと(笑)」