正しい予防法の実践で車中泊血栓症を防ごう (※写真はイメージ)
正しい予防法の実践で車中泊血栓症を防ごう (※写真はイメージ)
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車中泊血栓症の予防法(週刊朝日 2018年3月23日号より)
車中泊血栓症の予防法(週刊朝日 2018年3月23日号より)

「ロングフライト血栓症」とも呼ばれる車中泊血栓症は、飛行機や車の中で長時間座り続けて脚を動かさないことが誘因になる。重症化すると命に関わるため、早期発見と適切な予防法が不可欠だ。

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 車中泊血栓症は、医学的には「静脈血栓塞栓症」という。おもに脚の深いところにある静脈に血栓ができて、肺の血管(肺動脈)を詰まらせる病気だ。

 立ったり歩いたりして、普通に脚を動かす生活をしていれば発症のリスクは少ない。脚の筋肉がポンプの役割をして、血液を心臓に向かって送り出すからだ。しかし、入院加療、飛行機の長時間の搭乗(ロングフライト)、被災後の避難生活での車中泊などで脚をじゅうぶんに動かさない状態や、座った姿勢で脚を曲げた状態が続くと、血流が悪くなり血栓ができやすくなってしまう。「エコノミークラス症候群」という名称で知られるが、エコノミークラスだけに起こるわけではない。

 入院加療の場合と、ロングフライトや車中泊の場合で病気が起こるしくみは同じだが、対策などが異なるため、ここでは後者が誘因になる静脈血栓塞栓症について述べる。

 静脈にできた血栓は血管壁にへばりつき、数センチ~数十センチと徐々に増大していく。血栓は、できても小さければ自然に溶けてしまい治癒する。しかしある程度の大きさになると自然に溶かしきれなくなり、さまざまな症状を引き起こす。

 血栓がふくらはぎにとどまっている段階では無症状のこともあるが、脚の違和感、鈍痛、押して痛みのある圧痛、むくみなどがあらわれる。血栓が大腿部や骨盤内まで広がって静脈が詰まると、脚全体がむくみ、鈍痛や歩行困難をともなう。

 大きな血栓が血流に乗って心臓を経由し、肺動脈に流れ込むと「肺血栓塞栓症」となる。肺動脈が詰まるため、息苦しさ、めまいなどが起こり、酸素が不足して失神することもある。突然死の原因にもなりうる。

 肺血栓塞栓症がもっとも起こりやすいのは、飛行機から降りようと立ち上がって歩き出した直後や、車中泊で車から降りた直後だ。それまで滞留していた血液が、立ち上がる・動き出すことで一気に流れ、血栓が肺動脈に達してしまう。

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