西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、オープン戦での大谷翔平選手の投打について解説する。
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エンゼルスの大谷翔平がメジャーのオープン戦で投手と打者の二刀流調整を進めている。投手は原則として中5日で登板し、打者としては登板2日後と3日後にDHで出場した。試合登板翌日と登板2日前ブルペン投球、そして登板前日は投手としての調整、体のケアにあてた。
この形を開幕まで続けてメジャー流の二刀流としてのルーティーンを体に染みこませていくのだろう。シーズンでの起用の「基本形」となるものだと考える。シーズンに換算すると25試合前後を先発し、約50試合にDHで出場する計算だ。
まず投手から見ていこうと思う。2月24日(日本時間25日)のブルワーズ戦でのメジャー初登板の試合は、二回途中で2安打2失点だった。硬いマウンド、日本より滑りやすいMLB球への対応という点では、まだまだ様子見といった感じだった。投げ込みが足りないという言い方もできるだろうが、長いペナントレースを二刀流で乗り切るために……と考えれば、今から仕上がっていては持たない。開幕して4月は他の投手よりも、もっと球数を抑えながらの先発、打者もDHではなく代打起用とか、二刀流起用へじっくり段階を踏む必要も出てくる。
マウンドに関しては日本時代と同じように下半身を使えば、大きな負担がかかるだろうし、下半身を使えなければ、今度は上半身、肩や肘に負担がくる。そしてMLB球に滑るまいと意識しすぎると、上腕に余計な力が入り、張ってしまう。いかに自然に近い形で修正していくか。開幕までと考えるより、1年、2年をかけて……という考え方がいいと思う。
苦労するのは、やはりスライダーだろう。スプリットのようなはさむボールは何とかなるが、ひねる、もしくは切るボールは回転数が落ちるし、制球もつかない。大谷はいいカーブも持っているが、投手としての成功の鍵はスライダー、カーブと見る。あれだけの速球とスプリットがあれば、ある程度は通用するが、長いシーズンを乗り切るには、スライダーやカーブがないときつい。