著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」。今回は俳優・角野卓造さんの「はつね」の「タンメン」だ。
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僕の家は隣駅にありましてね。このお店も存在は知ってたんです。それを「おいしいから」ってすすめてくれたのは、亡くなった萩原流行でした。あいつ、6席しかない小さな店なのに、いつものテンガロンハットをかぶってて。邪魔だろ!って(笑)。
このタンメンはとにかくシンプル。透き通ったスープには野菜の甘みがじんわり。中細麺は後半ちょっとくたびれてくるのが、またいいんです。僕、タンメンは3段階で食べるんですよ。半分あたりで胡椒を振る。3分の1から4分の1になったら、お酢をちょいと回しかけると、後味もさっぱりするんです。
ドラマでは中華料理屋の親父を20年以上やってます。「幸楽」は決してうまくはないんで(笑)よそのことは言えないけど、最近のラーメンは「うますぎる」。町に根づくまで長続きする店も少ない。その点、ここは店主の真面目さがそのまま味に出ています。若いころから各地でいろんなものを食べてきた私ですが、こういう基本を大切にした味が一番、ほっとするんです。(取材・文/浅野裕見子)
「はつね」東京都杉並区西荻南3-11-9/営業時間:11:00~17:00ごろ(土は~16:00ごろ) スープがなくなり次第終了/定休日:日月祝
※週刊朝日 2018年3月9日号