「広汎性子宮頸部摘出術は、術後の妊娠・出産を目指すための手術です。がんの治療後も生殖医療や産科、周産期の医師と連携がとれていることが大切です」(同)

 広汎性子宮頸部摘出術には、腟式と腹式の方法がある。腟式は腟から器具を入れて手術する方法で、腹式に比べて妊娠率は高いが、再発率は高い。腹式には開腹手術と腹腔鏡手術がある。おなかを大きく開かなくてすむ腹腔鏡手術は術後に子宮内が癒着しにくいことなどから、妊娠率が高くなることが期待できる。

 子宮頸がん手術において、腹腔鏡手術の導入は進んでいる。開腹手術は腹部を約20センチ切開するが、腹腔鏡手術は腹部に5~10ミリの穴を4、5カ所開けて手術する。傷が目立たず、術後の回復が早くなる。

 がん研有明病院婦人科副部長の金尾祐之医師は、腹腔鏡手術の最大のメリットは別のところにあるという。

「子宮頸部は骨盤の奥底にあるので、開腹すると骨盤の骨が邪魔になって奥まで手が届きにくく、見づらいという難点があります。その点、腹腔鏡手術は拡大視でき、奥まで器具を到達させることが可能で、出血した場合も正確に止血できるのです」

 骨盤内には子宮のほかに膀胱、直腸、尿管があり、これらを支配する神経も入り組んでいる。こうした臓器や神経を傷つけないためにも、腹腔鏡の拡大視による効果は大きい。

 実際に腹腔鏡手術は開腹手術に比べて、術後の出血や感染が少ない。再発率などの手術成績は、ステージで少なくともIA2期、IB1期、IIA1期に関しては、開腹手術と変わらない。

 このためIA2期、IB1期、IIA1期の「広汎子宮全摘出術」が14年から、同院をはじめ、一部の施設で先進医療として認可されている。先進医療を実施している病院で手術を受ける場合、標準治療と共通する診察や検査、投薬、入院などは保険が適用され、手術費用のみ自己負担となる。実施施設は急速に増え、現在55施設(18年2月)が認可されている。子宮体がんの腹腔鏡手術はすでに保険が適用されているが、子宮頸がんも近いうちに保険が適用される見通しだ。

 ただし、腹腔鏡手術は、開腹手術とは別の技術が必要になる。

「腹腔鏡手術に慣れていないのに無理して手術すると、がんをとり残すほか、出血が増えたり、膀胱の神経を傷つけて排尿障害が起きたりする危険性があります」(金尾医師)

 腹腔鏡手術を検討する際には、施設の手術数も知っておきたい。(ライター・中寺暁子)

週刊朝日  2018年3月9日号