筋金入りのファンからすれば、マナーを守れないのは、にわかファン。羽生はSNSでプライベートを明かさない神秘性があるし、国内の観戦チケットは入手困難。転売サイトでも、定価の10倍近いプラチナチケットとなれば、またとないチャンスに無謀な行動を取ってしまうのでしょうけど……」(坂口さん)
長年追いかけているファンには矜持があるのだろう。そこで今回、いかにして筋金入りの“真正”ファンが復活を支援したのか、レポートする。
「ユヅのために、天に願いが届いてほしい一心で、巡礼を続けています」
まず1人目は、田中美里さん(仮名・48・会社員・独身)。今シーズン、聖地とされる神社に足しげく通った。羽生ファン歴5年。ちなみに、羽生が好きというだけではファン歴はカウントされず、お金と時間を費やして初めてファンと名乗れるのだとか。
田中さんが巡礼した聖地とは、関西にある三つの神社。名前が似ているのでファンが殺到している「弓弦羽神社」(神戸市)。二つ目が、フリー演技の曲目「SEIMEI」ゆかりの晴明神社(京都市)。そして昨年11月に足をケガしてからは、「足の神様」として知られる服部天神宮(大阪府豊中市)が聖地に加わった。
境内には、「神様、どうかユヅに力を」「けがを乗り越え、金メダルをとれますように!」など、熱い思いの絵馬がびっしりと掛けられている。
「羽生選手のファンが参拝しない日はありません」
弓弦羽神社の澤田政泰宮司は言う。7~8年前から、羽生本人もたびたび訪れるという同神社。東日本大震災後の2011年7月には、「世界のトップになれますように…そして、東北の光となれるように!」と書いた絵馬を奉納している。
田中さんは、羽生が足を痛めてからの約3カ月間、6回にわたって神社詣で。往復の新幹線代を含む交通費は、1回3万円強。ちなみに、車中の音楽はフリー演技の曲目「SEIMEI」。宿泊すれば、さらに費用はかさむ。この3カ月間で、五輪に向けた回復祈願のために、30万円はつぎ込んだ。