──カナダのケイトリン・オズモンドはいかがでしょう。

 安定感が課題だった選手が、安定感を身につけてきました。元々ポテンシャルが高い選手でした。与えられた振り付けをただこなしているのではなく、どう表現したいのかしっかり見ている人に届く表現ができていて、世界観、ビジョンが明確にあるという印象です。スピンの入り方も独創的な難しい入り方をたくさん持っていて、緩急のつけ方もうまく、隙のないプログラムを滑ります。

──さて日本勢ですが、宮原知子はみごと復帰を果たしました。

 滑る喜びを練習からも感じるので、とても良い状態に見えます。見ている限りでは、元々の宮原さんのレベルに達してきたかな、と。以前は淡々と一生懸命こなしている印象が強かったのが、この休養の間にすごくいろんな表情をおりまぜて豊かな表現力を身につけたと思います。けがしたことによって視野が広がり、無駄ではなかった時間になったのではないかという、良い復帰の仕方になりました。

──坂本花織は、全日本で大逆転の代表入りでしたね。

 今シーズンからシニアに参戦して、いろいろなことを学んで、得るものがたくさんあったはず。それがオリンピックでも生きてくるといいですね。見応えのある、流れが非常にきれいなジャンプで注目されていますが、スピンやステップも加点が取れる質のものです。

──日本の女子はメダルのチャンスはあるでしょうか。

 あるのではないかと思います。鉄壁の人がどうなるか、わからないのがオリンピックの面白さでもある。他のトップ選手のミス待ちではなく確実に戦えるものがあるので、そこは本人たちも自信にしてほしい。あとは戦略をプラスしていけばさらに良いと思います。

──金メダルをとったトリノから12年。もうすっかり解説者としてベテランになられましたが、現役の当時と見方はどのように変わりましたか?

 解説者としては、選手としての経験を生かしてお話しすることも大事ですが、同時に見ている人が納得して次に進めるように、ジャッジがどう判断して見ているのかということを踏まえた上でお話しするようにしています。なぜこういう結果なのか、ということが解決できなければ解説の仕事ができていない。これは選手の頃には考えていなかったことでした。結果が出てから後づけで分析する時間があまりないので、リアルタイムでお伝えすることがほとんどです。そういった意味では自分の主観も入れて、いろんな予測をしながらなので、緊張感があります。

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