──本番前の選手の表情なども注意してご覧になっているようですね。

 それは他の選手と比べてではなく、いつもとどう違うのかということで読み取ります。顔がこわばっていても、緊張しているのか、集中しているのか。その人が普段どういう癖を持っているのか知った上で解説することも重要です。

──他に解説をする上で、特に気をつけていらっしゃることはありますか。
 ネガティブな情報はお伝えしても、見ている人が必要な情報ではないことが多いんです。ジャンプなどでも加点がゼロだなというときは何も言いません。プラスに転じるかマイナスに転じるか、勝負がかかっているときは解説します。無言だったら、プラスマイナスゼロですね。指摘しなかったら、今いちの結果なのだろうとキャッチしているコアなファンの方もいます。

──よく言われる「うまいスケーティング」の意味を、改めて一般の方にわかりやすく説明していただけますか。

 スケーティングの質の一つは加速力。うまく体重をエッジの良いところに乗せないと効率よくスピードがついていきません。その乗せる場所がピンポイントでうまくできている人は、無駄な力を使わずに加速ができる。それができないと一生懸命こいでいかないといけないんです。テレビではスピードがあまり伝わらないこともあるので、それは現場で見ている私たちが解説できることの一つと思います。

(構成・文/田村明子、本誌・工藤早春)

週刊朝日 2018年2月9日号

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