「著作権などのコンテンツに絡む権利意識の低さが、むしろネット社会ではコンテンツの拡散に一役買う形になりました。あるグループが自分たちの楽曲のダンス動画をネットで募集したところ世界中から映像が届き、それが最終的にその楽曲が世界的に知られるきっかけとなりました。『権利を主張する前に、まずその魅力に触れてもらう』という方法は、今やネットにおいてスタンダードとなりました」

 以来、「権利」を手放した先に発生するビジネスでもうける、という発想に切り替わったという。実に10年前の出来事である。

「いま韓国では、『聴く』音楽から『見る』音楽へ完全にシフトしています」

 約20年前、若者たちはラジオから流れてくる洋楽を夢中で聴いていたように、今の若者は、ラジオではなくネットを介して音楽に触れている。それは日本でも同じだ。

 例えばBTSは、YouTubeの公式チャンネルで多数のミュージックビデオを公開。ネットで偶然目にした完成度の高いパフォーマンスに引き込まれる人が続出した。そうしてファンになった人が、SNSで魅力を拡散。それが楽曲のストリーミング(受信しながら再生する方法)数やダウンロード数、イベントの動員数につながっている。

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