「現在は認められていない、自由診療と保険診療を組み合わせた混合診療を解禁すればいい。すると価格破壊を狙って診療費を値下げする医者が出てきて、健保も患者をそちらに誘導しますから、医療費が減ります」(医療ガバナンス研究所の上昌広理事長)
「年金も考え方を変えるべきです。『支給開始年齢の引き上げ』と言うから、抵抗が強くなる。デンマークやオランダ、イタリアなどでは、平均余命の伸長に応じて支給開始年齢を自動的に引き上げる措置がすでに決められています。これに似たもので、年金額の調整はあるものの、一定年齢の幅でいつからもらってもいいようにして、負担と給付の関係で保険数理上、損得がない年齢を『フル年金支給開始年齢』と呼ぶようにしてはどうでしょうか」(小黒教授)
お金の話ではないが、国際医療福祉大の高橋泰教授は、「今後は介護そのものが必要なくなっていく」と、驚くべき予想を口にする。
「今の日本の介護は『オムツ交換』や『食事介助』が中心ですが、欧米では無理やり行う食事介助は虐待と考える人が多く、自分で食べられなくなったら寿命と考え、あきらめるというスタイルが一般的です。日本でも80歳より下の人に、『オムツや食事介助をされても、生き続けたいですか』と聞くと、7~8割の人が『まっぴらごめんだ』と答えます。こういう高齢者が急増して、介護のありようが大きく変わると見ています」
ところで、15年9月の財政制度等審議会に、財務省が興味深い資料を提出している。「我が国財政の変遷」をたどる中で、先にも触れた、現在と同じGDP比約200%あった終戦直前の債務残高が、主にハイパーインフレーションによって「克服」されたと分析しているのだ。
それによると、卸売物価上昇率が1946年度432.9%、47年度195.9%、48年度165.6%と暴騰し続けると、債務残高対GDP比は46年度56%、47年度28%、48年度20%と急減した。預金封鎖などもあったため、国民の窮状は大変なものだったが、国家財政の観点ではわずか3年で問題がないレベルに下がったのである。
ハイパーインフレーションが起きると財政危機が一気に解決することを資料は教えてくれるが、問題は資料を出した財務省の意図である。単なる分析なのか、「こうなっては、いけない」とする警告なのか、それとも……。(本誌・首藤由之)
※週刊朝日 2018年1月5-12日合併号より抜粋