「足りないから足そう、ではなく、きちんと引き立てられるような余白がある。よくよく見ても、ムダな線一つないんです。“盛る”のではなく“引く”ことで生まれる美しさというのでしょうか。デッサン力と描写の伝え方が、さすがだなと唸ってしまいます」

 一コマの中でどう見せるかという視点は、現代のインスタグラムにも通じる。正方形の空間の中で、シーンをいかに切り取るかは、漫画から学べるポイントもありそうだ。15万人を超えるフォロワーを持つ伊藤さんのインスタグラム(masakoito29)にも、余白を生かした写真が多い。

「いろんなものを詰め込みすぎると、見る人が何を見たらいいのかわからなくなります。要素を極力そぎ落とすことで、見せたいものを強調させられる。あとは、見せたいものをどう切り取って見せるか。そこは、サザエさんの4コマもヒントになると思いますよ」

(本誌・松岡かすみ)

週刊朝日 2018年1月5-12日合併号より抜粋

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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