■酒鬼薔薇聖斗事件と秋葉原通り魔事件の違い
さて、平成9年(97年)に、14歳の少年Aによる酒鬼薔薇聖斗事件が神戸市で発生します。以降、数々の動機不可解な単独凶悪犯罪が連続し、人々を震え上がらせました。後にサイコパスの名で知られましたが、痛みを含めた人の感情を自分の心に映し出せない「同感能力を欠いた存在」が、社会に包摂されずに暴走したのだと考えられました。
平成20年(08年)6月の「秋葉原通り魔事件」も単独凶悪犯罪ですが、酒鬼薔薇事件や以降の類似事件とは動機構造が違う。犯人はネットで「どうでもいい存在=誰でもいい存在」として扱われたことへの復讐として殺人を思い立ちました。以降この種の「誰でもよかった殺人」が目立ち始めます。平成28年(16年)7月の「相模原障害者施設殺傷事件」や、平成29年(17年)10月の「座間9遺体事件」です。
■コントロール不全の埋め合わせで殺戮(さつりく)するコントロール系の男
相模原と座間の両容疑者はともに90年まれで、両者とも美容整形していると報じられました。美容整形は、相手の心を見ずに自分の見栄えにこだわるコントロール志向の表れです。彼らが殺害したのは、相模原では重度障害者、座間では若い少女らという具合に、共通して「コントロール可能な弱者」を選んでいます。
他人を支配したいのに支配できない。その結果、抑うつ的な不全感に陥り、一部がコントロール不全を埋め合わせる犯罪に向かう……最初に話したパターンが見いだされます。こうしたコントロール志向は若い男たち全体の傾向です。コントロール志向が強すぎると挫折への恐れから男たちが性からの退却傾向を示します。
コントロール系の男には、女を理解しようとか幸せにしようというマインドはない。セックスにおいても、アダルト映像をなぞって「オレだってこんなこともできるぞ」という自己満足を得たがります。置き去りにされがちな女は、性からの退却傾向を示します。