最先端の若者文化や社会現象を鋭く指摘することで、脚光を浴びた社会学者宮台真司さん(首都大学東京教授)。平成の重大事件や震災などを手がかりに、社会の構造や問題点を読み解いてもらった。
■コントロールすることで承認感覚を得たい
平成は「コントロール系」の男たちの怖さがあらわになった時代です。犯罪者の男たちに限らず、他人をコントロールすることで自分への承認感覚を得たいという欲望が強まりました。他人を支配したいのに支配できない。それで抑うつ的な不全感に陥った者の一部が、コントロール不全を埋め合わせる犯罪に向かいました。
自分がコントロールされるだけの存在だという劣等感を埋め合わせるために、弱い者を見つけてコントロールしたがる、という動きが進んだのです。そこから“ネトウヨ”も生まれたし、様々な犯罪さえ生まれました。
見栄えに気を使うのも、見掛けによって相手をコントロールすることで承認されたいという願望によるものです。平成29年(2017年)ユーキャン新語・流行語大賞に「インスタ映え」が選ばれたことが、今を象徴します。
■一つ屋根の下のアカの他人から始まった
平成は、個人が分断されて孤立した時代です。平成の幕開け(1989年)に、家族にまつわる二つの大きな事件が起こります。一つ目は、3~4月に4人の少年が逮捕された東京・綾瀬の「女子高生コンクリート詰め殺人事件」。二つ目は、7月に宮崎勤元死刑囚が逮捕された「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件」です。
二つは似ている。宮崎勤元死刑囚は、家の敷地のはなれで、遺体を解体した。綾瀬の事件では、階下に両親が住む家の2階で、女子高生を40日間暴行して死なせた。双方とも犯行が家族の近辺で行われています。「一つ屋根の下のアカの他人」がキーワードです。
■糸が切れた少年集団犯罪と動機不可解な単独凶悪犯罪
実は予兆がありました。平成に入る7年前、1982年からワンルームマンション建設ラッシュになって各地で反対運動が起こりましたが、「単身世帯の孤立」と「地域共同体の空洞化」を象徴します。